今回のおはなし




秋子と秋男のお話です。

    

あなたにとって 故郷って何ですか?
あなたにとって 故郷ってなくてはならないものですか?
あなたにとって 故郷って身近かなものですか?
それとも・・・・

一人の少女が夜空を見上げ、星空に何か話しかけています。


私の故郷は星がよく見えます。山が友達です。海が友達です。お花畑も友達です。
明日、7年振りに故郷へ帰ります。幼なじみの秋男くん、元気かな。
明日、故郷に帰ったら秋男くんにとてもなつかしい山や海やお花畑に連れていってもらうことになって
いるのよ。


少女は星空に故郷の思い出を、自分の夢を、話しかけているようです。
この物語の主人公。彼女の名前は秋子、17才の秋。


           ♪演奏♪  里の秋  もみじ

    

翌日、秋子は幼なじみの秋男といっしょに、昔よく虫とりや栗拾い、たけのこ堀りに出かけた
山に行ってみることにしました。


           ♪演奏♪  大きなくりの木の下で

    

秋男くん、これが昔私たちのよく遊んだあの森なの? 木が全部切られているわ、どうして?

僕もよくわからないけど、ここにあった木はみんな加工されて紙になっているらしいよ。

えっ、紙?

そうだよ紙は木からつくられるんだよ。
僕がこの前調べたんだけど、1989年現在、日本で紙用として新たに消費された木材は3684万m3。
約半分が輸入材で、うち熱帯材は3.5%を占めるんだ。
すべてを20年間育てた日本のスギの木に換算すると、1年間に2億8200万本が紙のために
消費されたことになるんだ。
森林面積にして1410Km2。これだけの木は1年間にCO2を317万t吸収し、
240万tのO2を排出してくれるんだ。
木は紙の原料としてでなく環境を浄化してくれているんだよね。


私たちの遊んだ森は私たちを守ってくれていたのね。

           ♪演奏♪  まっかな秋  七つの子

    

ねえ秋男くん、今度は昔よく潮干狩りしたり、1日中泳いだりした海へ行ってみない?
ねえいこうよ、あの海。


           ♪演奏♪  

    

秋男くん、これが昔私たちのよく遊んだあの海なの?
これじゃ泳げないわ、海水は汚いしゴミがたくさん浮いてる。ねえどうして?


僕もよくわからないけど、この僕たちの海を汚している原因の70%は生活排水らしいんだ。

えっ、生活排水?

そうだよ台所は海の入口なんだよ。
僕がこの前調べたんだけど、台所からいろんな汚れがこの海にむかって流れているんだ。
泡ぶくの洗剤、漂白剤、食用油、料理の残り汁。
これらの排水を浄化するのに、必要な水の量がすごいんだ。
例えば浴槽1杯分を300リットルとすると、
みそ汁お椀1杯分を浄化するのに必要な水の量は浴槽4.7杯分。
同じく牛乳コップ1杯分を浄化するのに必要な水の量は浴槽10杯分、
おでんの汁なべ1杯分を浄化するのに必要な水の量は浴槽25杯分、
天ぷら油なべ1杯分を浄化するのに必要な水の量はなんと浴槽330杯分もの水が必要なんだよ。
それに最近では河川の汚れが発ガン性物質を生むこともわかってきたんだ。


台所が海の入口だったなんて知らなかったわ。

           ♪演奏♪  浜辺の歌

    

           ♪演奏♪  夕焼け小焼け

さあ、もう夕方になってきた、そろそろかえろう

    

           ♪演奏♪  家路〜新世界より(曲中)

紙は木から作られる、台所は海の入口、紙は木から作られる、台所は海の入口・・・
故郷が姿を変えてしまったのは、私のせいだわ、私が悪いんだわ、この私が。


    

           ♪演奏♪  赤い風船(曲中)

ああ、やっぱり。
秋子は深いため息をつきました。

ここも変わってしまったのね、
と秋子はつぶやきました。

秋子の目の前にはゴミ捨て場になっていました。
ここは昔、お花畑でした。バラやチュ−リップ、からたちの花が咲いていたお花畑でした。


           ♪演奏♪  バラが咲いた チュ−リップ からたちの花

    

秋男くん、どうしてこんなにゴミが多いの?
どうして私たちのお花畑が埋もれてしまうほどゴミが多いの?


秋男は答えました。

日本人は1日に1人1Kgものゴミを出しているんだ。
かつてはやがて土にかえるはずにものだったゴミが、今では谷を埋め、海を埋め、
とうとうお花畑まで埋めてしまったんだね。
自然のサイクルから完全にはずれてしまったものをどんどん作り消費する。
これでは地球はやせ細るばかりだよね。
今から4年前の資料だけど、1年間に日本人が出したゴミは東京ド−ム130杯分だって。
僕らにはとても想像つかないね


秋子は悲しくなる一方でした。
故郷が姿をかえてしまったのは間違いなく自分のせいだと思ったからです。
みるみるうちに涙があふれてきました。


    

           ♪演奏♪  卒業写真 シャボン玉

自宅にかえった秋子は秋男と夕食をいっしょに食べたあと、
自分の部屋で一緒になつかしいアルバムを見ていました。


あっ、この写真はお父さんとシャボン玉をしたときの写真だわ。
あっ、これはお母さんと山へいっぱいお弁当をもってピクニックへ行った時の写真だわ。
なつかしいなあ。


それらの写真には昔どうりの故郷の姿がありました。

           ♪演奏♪  かあさんの歌

    

ここの家は昔とかわらないね。
と秋男がいいました。

僕、昔からあの古い時計が好きだったんだよ。あの時計が・・・

           ♪演奏♪  おおきな古時計

    

私の思い出はね、おばあちゃんの歌ってくれた子守歌かな。
私はあの歌を聞かないとなかなか眠らない子だったらしいわ


           ♪演奏♪  竹田の子守歌

    

9月23日水曜日 雨。
この雨は私の心を現わしている。

紙は木から作られる。私は、分別ゴミをきちんと出さなかった。
その結果、紙のリサイクルができなかったにちがいない。
だから必要以上の木が私の故郷の森から消えた。

台所は海の入口。私は、流しから天ぷら油をそのまま流してしまった。
その結果、川が汚れ、海が汚れていったにちがいない。
だから魚たちが私の故郷の海から消えた。

地球はゴミに埋もれてしまうの。私は、ゴミを減らす工夫を何もしなかった。
その結果、必要以上にゴミが増えてしまったにちがいない。
だからお花畑が私の故郷から消えた。

あっ、雨があがったみたい、おかあさん、ちょっと私、出かけてくるわ。


    

           ♪演奏♪  WHITE MANE

(WHITE MANE曲中)

自分一人で何が出来るか、どこまでできるかわからないけど私やってみるわ。
古新聞はリサイクルするわ。
買い物のときには買い物かごを持っていくわ。
水切り袋を上手に使って生活排水をへらすことにするわ。


    

その日、私は夢をみた。私の故郷がお化け屋敷になってしまったの。

           ♪演奏♪  FEEL SO GOOD

    

「秋男くん、私、わかった気がする」
秋子はいいました。

「えっ、なにが」
秋男くんは聞きました。

私のちょっとした行動で故郷が失われていくなら、私のちょっとした行動で故郷が
取り戻せるかもしれないってことでしょ。
ということは故郷って、私にとっての故郷ってとても身近なものなんじゃないかってそう思ったの。
だから私にとっての故郷ってきっと、動物を愛する心、ううん動物だけじゃない。
人間を愛する心、ううん人間だけじゃない。自然を愛する心、ううん自然だけじゃない。
地球を愛する心、そうよ地球を愛する心なのよ。
あっ、見て流れ星! とてもきれいね。まだこの星空だけは昔のままね。
この星空だけは、ずっとこのままでいてほしいわ。ねえあなたも見上げてごらん夜の星を。


           ♪演奏♪  見上げてごらん夜の星を

    

あなたにとって 故郷って何ですか
あなたにとって 故郷ってなくてはならないものですか
あなたにとって 故郷って身近かなものですか  
それとも・・・・

地球にやさしいあなたが好きです。地球にやさしいあなたが好きです。




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